DevEXとは

2024.9.30

目次

  1. はじめに
  2. DevExとは何か
  3. DevExがアプリケーションとインフラにもたらすメリット
  4. DevExを始める時のポイント
  5. 代表的なDevEx技術
  6. DevExに関する事例
  7. Sreakeでできること

1. はじめに

Developer Experience(DevEx)は「開発者体験」とも呼ばれ、開発者の生産性と満足度を向上させる考え方や取り組みを指す言葉で、近年非常に注目されている概念です。

開発者にとってストレスとなるタスクを減らし、より創造的な仕事に取り組めるなど、開発者の体験を向上させることは、開発生産性や組織全体のイノベーションを促進する鍵となります。

本稿では、DevExがどのようなものであるか、アプリケーション開発とインフラストラクチャにどのようなメリットをもたらすのかを紹介します。

また、DevExを効果的に導入するためのポイントと、その過程で活用できる代表的な技術や事例についても解説します。

2. DevEXとは何か

DevEx(Developer Experience)は、開発者の生産性と満足度を向上させることを目的とした概念や、その取り組みのことを指します。

この考え方は、実はソフトウェア開発が盛んになった当初から存在しており、エンジニアが直面する課題を解決するためのツールや、開発プロセスの進化とともに発展を遂げてきました。

近頃は、DevExが企業におけるイノベーションと効率性の向上を目指す動きとして、ますます重要視されるようになっています。

近年DevExがトレンドとなっている背景には、ソフトウェア開発の多様さや複雑性、そしてエンジニアの労働市場における需要の高まりが関係しています。

エンジニアが快適に作業できる環境や、スキルアップにつながる働き方や教育機会を提供することは、優秀な人材の確保と定着にも大きく寄与します。

また、DevExは企業が直面する様々なシステム開発の課題を解決する手段としても有効です。

例えば、開発プロセスや運用の自動化により、繰り返し発生するタスクを減らし、エンジニアがより重要な作業に集中できるようになります。

また、コミュニケーションツールを改善すれば、チーム間のコミュニケーションが促進されたり、プロジェクトの進行がスムーズになるなどの効果も期待できます。

現在、世界中の多くの企業がDevExの向上に取り組んでいます。

例えば、GoogleやMicrosoftなどの大手グローバルIT企業は、エンジニア向けの包括的なツールセットやプラットフォームを提供しており、これらのツールを活用することで、エンジニアは効率的にコードを記述し、テストやデプロイまでスムーズに実施することができるようにしています。

国内でも、スタートアップから大企業まで、DevExの向上に注力する動きが広がっており、エンジニアの生産性向上や働きやすい環境の実現が期待されています。

DevExの向上は、エンジニア個人の満足度の向上だけでなく、企業全体の競争力強化にも寄与するため、今後もその重要性は高まっていくことが予想されます。

3. DevExがアプリケーションとインフラにもたらすメリット

DevExの改善は、システム開発から運用、組織文化に至るまで、多岐にわたるメリットをもたらします。

システム開発時のメリット

DevExは、エンジニアが使いやすいツールやフレームワークを利用することによって高まる例が多くあります。

先進的なIDEやバージョン管理ツールの利用、静的解析などを含むCICD自動化によって、コーディングの効率が向上し、アプリケーションの品質と機能性向上にも繋がっていきます。

また、インフラの構成管理なども重要なポイントとなります。

クラウドインフラの構築や管理が迅速に行えることや、繰り返しの手作業や煩雑な操作手順をなくすことで、作業ミスが減るなど品質の向上にも繋がります。

こういった開発のためのツールや、開発スターターキットを整備することは、近年プラットフォーム エンジニアリングのとも呼ばれ、非常に注目を集めています。

システム運用時のメリット

DevExの良好な環境では、CI/CDパイプラインが整備されており、コードの変更が自動的にテストされ、本番環境にデプロイできる環境が整っています。

これにより、リリースプロセスが迅速化され、運用効率が向上します。

また、高度なモニタリングツールとロギングシステムが整備されていれば、運用中のアプリケーションのパフォーマンスをリアルタイムで把握し、問題が発生した場合には迅速に対処することができるようになります。

ダッシュボードによる一元的なシステム状況の可視化は、エンジニアの運用負荷を減らしつつ、システムの信頼性を高めることに繋がります。

組織文化や開発プロセス全体に関するメリット

DevExの改善は、開発チーム間のコミュニケーションやコラボレーションにも大きく関係します。

共有ツールを使い、コミュニケーションを円滑にとることができるようになれば、チーム内外のメンバーが知識を共有し、協力して問題を解決できるようになります。

また、エンジニアが新しい技術やスキルを学び、キャリアを発展させる機会を作ることもDevEx向上のポイントです。

エンジニアのスキルアップや自律的なキャリア形成が進む環境があることは、組織全体の雰囲気を活性化し、イノベーションの促進に繋がります。

このように、DevExの改善によってシステム開発や運用がより効率的で生産的になるだけでなく、個々のスキルアップや組織文化の変革が進むことによって、ビジネス変革や新たな挑戦への足がかりとなります。

4. DevExを始める時のポイント

DevExを組織に導入し、浸透させるためには、戦略的なアプローチが必要です。

DevExの導入に向けて必要な要素や、導入していく際のポイントには、以下のようなものがあります。

プラットフォームエンジニアリングとSRE

DevExの向上には、開発生産性を上げるためのツールや開発プラットフォームの整備が不可欠です。

コーディングを円滑に進めるための開発環境や、データ可視化ダッシュボード、CI/CD自動化など、先進的で便利なツールを組み合わせて活用することが求められます。

プラットフォームエンジニアリングは、そういった開発者のプラットフォームを整備し、開発プロセスの効率化を目指す取り組みの一つです。

SREチームなど高度な自動化知識を持った専門組織を導入すると、プラットフォームエンジニアリングを推進しやすく、先進的なツールや仕組みの導入が進めやすくなります。

クラウドネイティブ技術の利用

コンテナ、マイクロサービスアーキテクチャ、サーバレスなどを導入することで、DevExをさらに向上させることができます。

これらの技術は、アプリケーションのスケーラビリティと可用性を高め、開発者がより柔軟にシステムを構築できるようになります。

また、グローバルで先進的な技術知識を獲得することにより、エンジニアのキャリア形成や市場価値向上にも繋がるため、優秀なエンジニアの採用・定着の可能性も高まります。

そういった取り組みを実施していく上では、以下のようなポイントを押さえることが大切です。

段階的な導入

DevExの導入は、一度にすべてを実施するのではなく、段階的に行うことが重要です。組織体制や文化の変革を伴う場合が多いため、一気に始めるのではなく小規模なプロジェクトや特定のチームから始め、徐々に導入範囲を拡大していくことがポイントです。

組織文化の変革

DevExの成功は、技術的な側面だけでなく、組織文化の変革にも依存します。

エンジニアが意見を自由に表明し、新しいアイデアを試すことを奨励する文化を醸成することで、継続的な改善とイノベーションを促進することができます。

DevExへの取り組みは、単にツールや技術を導入するだけでなく、エンジニアの働き方や組織の文化を変革するプロセスとも言えます。

段階的な導入と組織文化の変革を通じて、DevExの導入を成功させ、開発者の生産性と満足度の向上を実現しましょう。

5. 代表的なDevEx技術

DevExを向上させるためには、さまざまな先進技術が欠かせません。

DevExの向上に寄与する技術やツールには以下のようなものがあります。

マイクロサービス・クラウドネイティブ関連の技術

マイクロサービスやクラウドを効率的に利用するアーキテクチャの採用は、DevExの改善において重要な役割を果たします。

Dockerは、アプリケーションをコンテナとしてパッケージ化し、環境間で一貫性を保ちながら配布・実行することを可能にします。

Kubernetes(k8s)は、これらのコンテナを管理・オーケストレーションするための基盤であり、大規模なアプリケーションのデプロイメント、スケーリング、運用を自動化することができます。

Istioは、マイクロサービス間の多様な通信をセキュアかつ効率的に管理するサービスメッシュを提供します。

これらの技術は、開発者がアプリケーションを容易に開発し、デプロイや管理をするために大きな役割を果たします。

Observabilityツール (O11y)

システムの状態をリアルタイムで監視し、問題を迅速に特定・解決する能力も、DevExを大きく向上させます。

GrafanaやPrometheusは、主にインフラのメトリクスの収集と可視化を行うOSSのモニタリング用ツールで、システムのパフォーマンスを監視し、一元的に可視化することができます。

New RelicやDatadogのようなAll in One型SaaSは、アプリケーションのパフォーマンスモニタリング(APM)機能を提供し、開発者がシステム全体の問題点をより手軽に、かつ深く理解するのに役立ちます。

IDEおよびバージョン管理ツール

統合開発環境(IDE)は、コーディング、デバッグ、テストの効率を大幅に向上させます。

Visual Studio CodeやIntelliJ IDEAなどのIDEは、豊富な機能とプラグインにより、開発者の生産性を大きく高めてくれます。またGoogle CloudのCloud Workstations などフルマネージドな開発環境は、セキュリティやスケーリング面での管理が容易で、Duet AIなど強力なコードアシスト機能も簡単に統合して利用することができます。

バージョン管理システムでは、Gitが業界標準として広く採用されており、GitLabやGitHubは、コードのバージョン管理だけでなく、CICDの自動化、コラボレーションのためのプラットフォームも提供しています。

開発者はこうしたCICDを効果的に利用することで、テストやデプロイに関する煩雑な作業やストレスを軽減することができます。

コミュニケーションツール

開発プロジェクトの成功は、効果的なコミュニケーションに大きく依存しています。Confluenceはドキュメント管理と知識共有のためのツールであり、JIRAはプロジェクトのタスクやスケジュール管理に大きな効果を発揮します。

SlackやMicrosoft Teamsのようなメッセージングツールは、チーム間の即時コミュニケーションを促進し、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで共有することができます。

生成AIの活用

近年では、AIの活用はエンジニアの開発生産性を向上させる大きなポイントとなります。

GitHub CopilotやGoogle CloudのDuet AIなどソースコード生成のアシストや、Microsoft 365 Copilotのような資料作成支援を行うAI関連サービスが続々と登場し、さらにChatGPT のAPIを利用して独自のAI活用も容易になっています。

AIツールを高度に活用して高品質なアウトプットを実現できれば、エンジニアがストレスを感じる作業を減らしながらも、開発生産性を大きく向上させることができます。

これらの技術を積極的に利用することが、エンジニアが直面する多くの課題や苦悩を解決し、DevExの大幅な向上に繋がっていきます。

6. DevExに関する事例

実際にDevExの向上に関する施策を行なっている企業の事例もご紹介します。

Works Human Intelligenceでは、技術的・組織的負債を返済しDevExを向上させるための取り組みを行なっています。組織や文化の意識改革を進めると同時に、開発者と協力して課題の洗い出しを行い、GitHubなどのツール導入やCICDの改善などを実施するなど、エンジニアの開発環境を改善することにも取り組んでいます。

リンクアンドモチベーションでは、GPTを活用して開発者体験を向上させる取り組みを行なっています。GitHub Copilotを導入し、さらにGPTについて組織全体で戦略的に学習するなど、AIツールを活用するための組織文化の改革にも力を入れて取り組んでいます。

NewsPicksでは、SREチームによるCICDの改善から開始したDevExの向上施策が、多くのチームに広がり、自発的に開発者体験の改善が進む組織文化が醸成できたと報告されています。SREチームによる小さな取り組みから段階的に改革を始め、組織横断的にDevExの浸透が進んだことで、採用にも良い影響があったという事例が紹介されています。

7. Sreakeでできること

Sreakeは、DevExの向上に重要とされるクラウドネイティブシステムの設計・構築スキルを持ったエンジニアやアーキテクトを擁し、高度なクラウド利用に関する技術支援を行なっています。

また、これまで多様な業界の多くのお客様に対し、DevExの向上に繋がる先進的なツール導入や、効果的なプラットフォームエンジニアリングなどを行うためのSREチームの組閣などを実施しております。

プラットフォームエンジニアリングやSREに関するコンサルティング、 SREチームで使用するツールの導入など、 DevExを向上させる取り組みに関して全般的にご支援しています。

ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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